少女マンガ名作選作品リスト

担当者:咲花圭良 作成日:1999/8/15

作   品

スター・レッド

作 者

萩尾望都

コミックス

小学館フラワーコミックス、

初 版

フラワーコミックス(全三巻・小学館)、小学館文庫(全二巻)他

初 出

「週刊少女コミック」1978年23号〜79年3号

登場人物:徳永星(セイ・ペンタ・トゥパール)、エルグ、徳永周、サンシャイン(陽一)、大内源、ベープマン、コマンド、アン・ジュール、カッパ、ピアン、シラサギ、ヨダカ、黒羽、百黒老、チグル、ラバーバ、レガット、ミュージュ他

あらすじ:西暦2276年、未来都市ニュー・トーキョーシティで十五才のある少女が存在した。徳永周博士の娘で徳永星、昼間は女学生だが、夜はニュートーキョーシティの上区で縄張りをまとめるレッドサークルのボス、レッド・セイだった。
 セイは本当は徳永周の養女だった。
 かつて惑星開発で火星も開発の手はつけられたのだが、なぜか子供が生まれないことがわかると、ワープ航法の確立された時代、流刑星として設定されたのみ、移民はされなくなり、やがて流刑民さえ送られなくなった後、物語の時より十二年前の再開発まで、地球政府は火星との交信を絶っていた。それがやがて再び移民星として開発の手が出され、地球政府がやってくると、子供が生まれなかったはずのこの星に、流刑民の子孫が住みついていたのだ。子孫たち――火星人たちは、白い髪、赤い目で、超能力を身につけていた。そのため地球人は火星人を調べようと子供を捕まえて生体実験を試みたため、火星人と地球人の間で戦いが起きた。その十年前の火星人と地球人との闘いがあった時に、戦士だったセイの両親が安全な場所へと娘をワープさせた場所、それが徳永博士の宇宙船だったのだ。(C)咲花圭良
 セイは髪を黒く染め、目にカラーコンタクトを入れることによって、これまで誰にも火星人であることがばれずに来た。ところがある日、下区のボスの右腕である男月世界人エルグによって郊外に招き出され、リーダー源によって下区と上区の連合を持ち出された時いさかいが起こり、そのいさかいでカラーコンタクトが割れ、念力を使ったことから、エルグに白い髪、赤い目、念力のあることがわかってしまう。
 セイはエルグの記憶を消すため彼の留守宅を訪れるが、そこは未知の機械が部屋の至るところに埋め込まれた部屋だった。その時エルグが帰宅し、彼の目も赤く、同朋だと告げるのであるが、存在しない第六世代(ヘクサ)目であることから嘘だとわかる。それで彼は言う。セイが焦がれてやまない火星に行きたいのなら三日後の夜に郊外のある場所に来いと。
 セイは戸惑いながらもその場所まで行くと、エルグはトラック型の宇宙船でみるみるうちに火星へと飛び立ち、火星人調査を開始するためクリュセ空港に着陸すると、偽装パスポートで入国、ところが空港ホテルで「テトラ(第四世代)」と、昔火星との戦争で戦ったコマンドに話かけられたのをきっかけに、火星人の存在、またいる位置のおおよそを知ることが出来たのだが、そこに火星人研究局局長ベープマンの罠がしかけられ…。

コメント:十数年前、「ポーの一族」、「トーマの心臓」、「11人いる!」と、世で萩尾望都を一大マンガ家に仕立てあげた作品に、いくら読んでもピンと来なかった私が、唯一はまった作品が、この「スター・レッド」である。
 他の作品と簡単に比較しても、この作品の主人公、セイほど激しい登場人物や、またストーリー展開で、これほど豊かな情緒の萩尾作品はないのではないかと思うほどである。

 作品の位置付けとして、竹宮の「地球へ…」、松本の「宇宙戦艦ヤマト」などと、時代を同じくして発表される。未来都市、超能力者、異星人など、なぜかこの当時頻繁に書かれた作品の要素がふんだんに取り入れられている。そうした共通性、細かい設定、思いがけない展開など、最初から完璧に練られた作品なのかと思いきや、担当編集者に突然連載を申し渡され、慌ててタイトルを提出し、毎月の締め切りとのおいかけっこで作って書いた、という自転車操業であったということなのだ。それを知らされるにつけても、萩尾は実は自転車操業の方がいい作品が書けるのではないかと思ったほどである。 
 中でも、この作品で珍しいのは、SFであれば無味乾燥になりがちのラブストーリーが描かれ、それが一段と作品に華を添えている。恋しつづけてきたものが、目の前から失われる運命、抗えぬ運命、届かぬ想い――ここに筆舌に尽くすだけ、無駄なのではないかとさえ、思える。(C)少女マンガ名作選
 もし、「ポーの一族」、「トーマの心臓」しか読んだことがない、といわれる方には、ぜひご一読をお勧めする。

 ただ一言付け加えるなら、火星への移住は理論的には可能だそうである。しかし移住したとしても、「スター・レッド」のような火星人は生まれてこないだろう。が、少なくとも、これを読んで以降、私にはあの蛸のようなイメージの火星人が、至極無粋な存在としてしか映らなくなってしまった。 

Copyright(C)1999-,Kiyora Sakihana. All rights reserved.