少女マンガ名作選作品リスト

担当者:咲花圭良 作成日:1999/2/19

作 品

ダークグリーン

作 者

佐々木淳子

コミックス

フラワーコミックス(小学館・全十巻)

初 版 

昭和58年9月〜昭和63年2月

初 出

週刊『少女コミック』昭和58年第2号より連載開始、途中『コロネット』誌上に移行、完結。

登場人物:西荻北斗、ルパート・ダイン、ガストン・バロー、磯貝、モーリン他

 (R−ドリーム内:リュオン、ホクト、ミュロウ、フィーン、クレイン、アブドル他)

あらすじ:198×年12月20日、世界中の人間が同じ夢を見た。それは眠ることによって入れる別世界で、「R―ドリーム」と呼ばれる夢だった。夢の中で人々は同じ「ゼル」と呼ばれる悪夢と闘い、もしゼルに破れて命を落とせば、現実では植物患者となり、ともすれば肉体も死にいたるというものだった。この奇妙な現象は世界中の話題になり、翌春にはマスコミなどに取り上げられるようになる。
 美大浪人二年目の西荻北斗は、同じ浪人生磯貝にこの話をきいた時は信じなかったが、自ら意識して眠った時、自分も知らないうちにR−ドリームに行っていたことを自覚する。夢の中の北斗は、戦士ホクトでありR−ドリームのヒーロー、リュオンという少年と行動をともにする人物だった。(C)咲花圭良
 ホクトらは、夢の中で、襲いくる正体不明の悪夢ゼルと闘い続ける。やがて黄金の肌を持つ少女ミュロウと出会い、三人は夢の中で共に行動するようになる。が、しかし、R−ドリームは夢であるために目覚めればその世界から脱出することができるが、なぜかリュオンだけは現実に目覚めることが出来ず、しかも現実の記憶が全くない。
 ホクトは現実で美大浪人を続けながら、リュオンの現実での姿を探し続ける。また、なぜ人類がR−ドリームを見るようになったのか、また悪夢ゼルの正体はなんなのか、つきとめる努力を重ねる。途中、夢の中で知り合った、R−ドリーム研究家ガストン・バロー博士との出会いがあり、様々な展開を経て、これらの問題が明らかにされるようになる。

コメント:人類がなぜ悪夢をみるようになったのか。そもそもこの悪夢の正体とは、「人類が作り上げた、自然界のバランスを崩すもの」が具象化したものである。いわゆるこのSF大作は、人類に警句を発する、非常にメッセージ性の高い作品である。SFマンガ家にありがちな、直接的表現(くさいと言ってもいい)が所々出てくるのは否めないが、読んでいる分にはさほど気にならない。しかもテーマのわりに説教くささは全然感じられない。ゲームにすれば当たるだろうに、と、今読み返せば思うのであるが、謎解きも兼ねたこの作品展開は、つまりメッセージ性のみならず、そういう種の面白さも含むということなのだ。(C)少女マンガ名作選
 読める、メッセージ性がある、にもかかわらず、どうも評価バランスが悪いのは、まず、紹介される時のテーマ、SFらしくない絵柄、絵柄で入るとストーリーが意外、少女マンガなのに少女マンガらしくない、でも少年には絵で抵抗を感じられてしまう、扱っているテーマがでかくて重すぎるという、結果、ファン層が比較的「通」に、さらには「オタク」に偏り(内容的にもノリでも結構オタク受けする部分はある)、アンケートをとっても上位に上がってこない、というのが主な原因だろうか。
 おそらく××マンガの定義を外れたとき、何もこだわりなく読める作品なのだろう。買って読んでも全然損はない。エンターテイメントとしてもきちんと読ませる力量のあるマンガ家であり、マンガである。佐々木淳子の代表作は『那由他』だったのが、この作品によって、位置づけと、知名度が上がったのは確かだと思う。

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