あらすじ:西暦2072年、ソ連とアメリカ、東西の緊張の高まる中、世界の核弾頭は30万個を越え、人々は核パニックを通り越して麻痺状態となり、末期的な状態で退廃的に生活し、アメリカでは夜ともなるとマッドラーズという集団が無差別破壊を繰り返すようになっていた。ソ連からの亡命女性科学者マーリアの妹、ソミューは、生まれつき目が見えず、「どこかに帰りたい」という思いを抱えながらアメリカで暮らしていた。ある日、突然の事故に、目の見えないソミューを助けたのは、ソミューの全く知らない男だった。そして、男はソミューに「時間だ。セレスの記憶を解放してくれ。」と言う。地球は、あと1ヶ月も持たない。分解してセレスを還元するのだ、と。訳が分からず抵抗するソミュー。そこへ姉が駆けつけ男は消える。
姉が恋人羅貴と出かけた晩、テレパスの少年、ムルティと留守番をしていたソミューは、家に訪れたあの男の気配を感じた。一人テラスへでたソミューの目に光線を当てる男。ソミューの目は見えるようになり、男の姿を見た瞬間、ソミューの心はセレスへとトリップするのであった。「セレス、それが答え。帰りたい、セレスへ」
ソミューの目をあけた男はマッドラーズの抗争に巻き込まれ、体が「反応」したために大爆発を引き起こしてしまう。その爆発で仲間が死に、怒ったマッドラーズのリーダー、カーリーは、男を追いつめ、名乗らない男に「プラズマ」とあだ名を付ける。ニュースで男の姿を見かけたソミューは、まだ全てを思い出さないままであったが、男が何者であるか確かめるために街へ出かけ、取り囲まれた男「プラズマ」を見つける。パトカーが表れ、全員が逃げ出す混乱の中で、ソミューとプラズマとカーリーは郊外の洞窟へと逃げ込むのであった。僕たちの故郷セレスを還元するのだ、というプラズマに、私たちの地球なのだ、と抵抗するソミュー。私が死んだら? というソミューの言葉に、ソミューにエネルギーを与え、不死の体とするプラズマ。ソミューは仮死状態となって、マーリアはソミューの死に呆然となる。
遺体保存室からソミューを連れ出したプラズマは、三千年前、プラズマやソミューとともに地球に舞い降りたセレス人の魂が宿るセコイアの木の元へとつれていき、一緒にその記憶を見て欲しいと頼む。セレスは他の星系の惑星。三千年前、セレスの軌道は大きくずれ込み、太陽へと引き込まれることが分かった。それまで、人々は、平和なセレスになぜ、不吉な恐ろしいエネルギーを持ったシィノーン(=プラズマ)が生まれたのか分からなかったが、魂に無限の記憶が可能であるティラーン(=ソミュー)との二人によって、セレスの還元が可能であることを知る。三千年後の地球文明の終焉を予測したセレス人は、「その時」がきたら、地球を分解しセレスを還元すべく、二人を地球に送り込んだのであった。セレスの記憶を内包しながら、転生を繰り返してきたソミュー。そして、プラズマは、グリーンランドの地層の中で、時がくるまで眠っている筈であったのに、地層の動きで二千年早く起こされて、すさみ、暮れて行くだけの地球を眺めて来たのであった。その時がきて、ソミューとともにセレスを還元することだけが希望だったプラズマ。しかし、地球人類として転生してきたソミューは、地球の未来を信じたかった。
一触即発の空気が漂い、核戦争の危機が近づき人々がシェルターへの避難を始めた。自分が死んだと思い絶望する姉マーリアのために、姉の恋人羅貴の居る日本に向かったソミューとプラズマ。そこで、二人は地球人類の生き残りを賭けたネオ・ルネサンス運動を知る。その基地が助かれば地球の破壊を待とう、という結論となるが、心ないスパイの「軍事基地らしい」という報告で、ついにその基地も攻撃目標となった事を知る。羅貴はアメリカのマーリアとテレビ電話で話をする。「もう、シェルターには入れない。ソミューの復讐をするのだ」というマーリアに「1時間でも、2時間でも、君自身のために生きてくれ」と言う羅貴。マーリアは「紙飛行機を飛ばすのが夢だった」と答え、直後に回線が切れた。宇宙空間で軍事衛星同士の攻撃が始まったのである。あと30分で地上にも攻撃が及ぶ。しかし、セレスを還元しようとしたとき、ソミューの魂は地球とセレスに引き裂かれそうになった。ソミューの痛みを見かねたプラズマは、基地の地下シェルターから単身地上に戻り、自らの体で基地を守ろうとする。超ビームを受けたら、死んでしまうかもしれないのに。マーリアがエアポートの端から祈りを込めて紙飛行機を飛ばす。直後に襲いくる閃光。(C)綏子
そして・・・
泣かないで、ティラーン。少しもこわい所じゃないんだから。地球はセレスと同じくらい美しい星だから。ごらんよ、月虹だ。地球でも見られる。地球の虹の伝説を知ってるかい? そう・・・、二度と決して人類を滅ぼさぬという神の約束だそうだ。
・・・・今度は人間が神に約束するのかもしれないね・・・・