コメント:「警告・心が疲れたときにこの作品を読むのはやめましょう」――それぐらい、この作品はホットなのだ。「暑い」のではない。「あたたかい」のでもない。「あったかい」――それが、正しい。
心が疲れていても、次の朝ちゃんと現実にかえっていつもの生活に戻れるなら、よい清涼剤かもしれない。
渡辺自身は、この作品を出世作として、「ジョセフへの追想」「はじめちゃんが一番!」などのヒット作を世に送り出して行くが、彼女の作品は、恋物語だけではなく、いつもどこかに「家族」がコンセプトとして存在しているような気がする。
「ファミリー!」自体、そんな激しい恋があるのでもなく、奇抜なストーリーがあるわけでもない。なぜ、こういう設定であれだけ読ませられるのか、不思議でさえある。かといって、人間のいざこざや、葛藤が描かれないわけではない。むしろ、やはりきちんと描かれている。が、彼女の作品の登場人物たちは、いつも、とても、「優しい」のだ。
本当にこんな家族、こんな人たちいるんだろうか、と、思ってしまう、が、いたらいいな、とも、信じたくなる。こんなふうにテレもせず、愛情ある言葉をかけられたなら、優しい気持ちになれたら、相手を思いやれたら、そうすれば、人間ってきっとこんなに楽で、こんなに幸せになれるのに――それが出来ないのが、私たち日本人の今の現実であるけれども、現実を忘れて、こんな夢もたまにはいい。(C)少女マンガ名作選
ちなみにこの作品を読んでかかる病気がいくつかある。?ホームステイがしたい。?アメリカに行きたい。?フィーに会ってみたい。(←いてへんいてへん、笑)
でも、あの、まるで男の子のようなフィーが、女性へと変わる前に、また、ジョナサンが家族の幸せを知った後に物語が閉じられていて、このお人よしの不器用な子供たちは、どんな大人になったんだろう、と思わず思いをめぐらせてしまう。彼らの未来は、きっと作者の頭の中にさえ存在しないのだろうが、ジョナサンも、フィーも、きっと一人一人の中で形を変えて成長し、いきづいているのだろう。