少女マンガ名作選作品リスト

担当者:咲花圭良  作成日:1999/5/19

作 品

ファミリー!

作 者

渡辺多恵子

コミックス

フラワーコミックス(全十一巻 小学館) 小学館漫画文庫(全六巻)

初 版

1 S57/4/2 2 8/20 3 12/2 4 S58/4/20 5 8/20 6 S59/2/20 7 6/20 8 11/20 9 S60/3/20 10 8/20 11 12/20

初 出

『別冊少女コミック』昭和56年7月号より連載

登場人物:フィー・アンダーソン(アンダーソン家長女)、ジョナサン・アレン、レイフ・マクギャリー、ケイ・アンダーソン(フィーの兄)、トレーシー・アンダーソン(フィーの妹)、ウィルフレッド・アンダーソン(フィーたちのパパ)、シェレン・アンダーソン(フィーたちのママ)、アダム(犬)、アーニー、アレン(ジョナサンの実母・故人)、ジェイムズ・マクギャリー(レイフ父)、リオ・ジョーンズ(ジェイムズの恋人)、ルイス・ゴールドマン(レイフの母)、マリア・ウィザビー(シェレンの姉、フィーたちのおば)、クラリッサ・ハーウェル(アンダーソン家のご近所)、ジャニス、キム、他

あらすじ:アンダーソン一家に、ある日ジョナサンという五歳の子供が、アダムという犬とともにやってくる。ジョナサンは来る早々、ウィルフレッドパパの隠し子だと告げ、母親のアーニー・アレンは死んだというのである。パパは確かに学生時代アーニーとつきあっていた覚えがあったが、隠し子を作るようなことはしていない。ジョナサンの言葉に疑いを抱いたのは長女のフィーだったが、彼女がジョナサンの荷物を探すうちに、ジョナサンは母の死後、親戚の家を頼って行ったが、結局は追い出されるようにその家を出、母親の知り合いを訪ねまわるうちにアンダーソン家にたどりついたのだということがわかった。(C)咲花圭良
 いきさつを知ったアンダーソン一家は、その少年、ジョナサンと犬のアダムを引き取ることにする。正式の養子ではないが、家族の一員として暮らすことになる。
 物語はこの後、ゲイである長男ケイの恋人だったレイフが、フィーに心ひかれ、思いを寄せるようになったところで、役者が出揃った格好になり、アンダーソン一家をとりまく環境のストーリーが一話完結形式で描かれていく。

コメント:「警告・心が疲れたときにこの作品を読むのはやめましょう」――それぐらい、この作品はホットなのだ。「暑い」のではない。「あたたかい」のでもない。「あったかい」――それが、正しい。
 心が疲れていても、次の朝ちゃんと現実にかえっていつもの生活に戻れるなら、よい清涼剤かもしれない。

渡辺自身は、この作品を出世作として、「ジョセフへの追想」「はじめちゃんが一番!」などのヒット作を世に送り出して行くが、彼女の作品は、恋物語だけではなく、いつもどこかに「家族」がコンセプトとして存在しているような気がする。
 「ファミリー!」自体、そんな激しい恋があるのでもなく、奇抜なストーリーがあるわけでもない。なぜ、こういう設定であれだけ読ませられるのか、不思議でさえある。かといって、人間のいざこざや、葛藤が描かれないわけではない。むしろ、やはりきちんと描かれている。が、彼女の作品の登場人物たちは、いつも、とても、「優しい」のだ。
 本当にこんな家族、こんな人たちいるんだろうか、と、思ってしまう、が、いたらいいな、とも、信じたくなる。こんなふうにテレもせず、愛情ある言葉をかけられたなら、優しい気持ちになれたら、相手を思いやれたら、そうすれば、人間ってきっとこんなに楽で、こんなに幸せになれるのに――それが出来ないのが、私たち日本人の今の現実であるけれども、現実を忘れて、こんな夢もたまにはいい。(C)少女マンガ名作選

 ちなみにこの作品を読んでかかる病気がいくつかある。?ホームステイがしたい。?アメリカに行きたい。?フィーに会ってみたい。(←いてへんいてへん、笑)
 でも、あの、まるで男の子のようなフィーが、女性へと変わる前に、また、ジョナサンが家族の幸せを知った後に物語が閉じられていて、このお人よしの不器用な子供たちは、どんな大人になったんだろう、と思わず思いをめぐらせてしまう。彼らの未来は、きっと作者の頭の中にさえ存在しないのだろうが、ジョナサンも、フィーも、きっと一人一人の中で形を変えて成長し、いきづいているのだろう。 

Copyright(C)1999-,Kiyora Sakihana. All rights reserved.