咲花圭良少女マンガ名作選特集・吉野朔実作品リスト

担当者:咲花圭良 作成日:1998/12/18

作 品 名

ジュリエットの卵

コミックス

ぶーけコミックス(集英社)

初   版 

1988.10/1989.6/1989.9/1989.11/1989.12

初   出 

「ぶーけ」1988年5月号〜

登場人物: 飴屋蛍、飴屋水(みなと)、下田游一、中嶋小夏、迎(むかい)夜貴子、苫子、日月、睦海、菊池、是方鳴呼、その他

あらすじ: 蛍(女)と水(男)は双子であり、兄妹でありながら、恋人だった。それが二人の進学を機に金沢と千葉に離れてしまい、蛍が新しい人たちと関わり、隣人下田游一と交流することで、蛍の世界が大きく変わり始める。水はそんな中、東京の大学を受けなおすことを理由に蛍の元にやってくるが、やがて二人の仲が水だけを溺愛している母親にバレて、水は連れ戻され、生活の綱を絶たれた蛍は大学をやめ、バイトで始めたモデルの仕事を本業に変えて生活しはじめる。しかし、そうして二人の双子が断絶されることにより、二人の世界は大きく狂いはじめるのである。(C)咲花圭良

コメント: ちょっと設定を読んでみると、非常に軽いノリに見えるのに、読んで行くうちに、実はその見解がとんでもないことに気づかされる作品である。吉野朔実特有の叙情が、絵でも言葉でも洗練され、美しく、全作品を通した中でも一番安定して完成度も高く、また吉野をメジャー化させる記念碑的作品が、この「ジュリエットの卵」ではないかと思われる。(C)少女マンガ名作選
 吉野が前作「少年は荒野をめざす」から描き続けた「双子」が、ここでは実際的に描かれることになるのだが、「二人で一つ」のバランスを持った二人が、裂かれることによって一人の人格として成っていく、その過程が、重くなく、軽くなく、見事に描き出されている。
 「ジュリエットの卵」とは、「かえらない卵」の言いである。
 「もう一人の自分」に焦がれ、終わりなき恋を続けるという夢が、破壊されることで一人の人間として自立していく女性の過程を、描きだしているのかもしれない。

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